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デートの準備



僕は君と出逢ってね
心の中をいっぱいにしたのだけれど
なんだか焦ったりも
していたのかな

君を部屋に招き入れたくて
掃除をしていた時
深夜まで、コーヒー淹れて、音楽かけて
楽しかったな

僕が楽しかったものだから
雑巾を搾った水も
心を満たす大事なものだった
間違いだったのか、それも、それ以外も

ほら、心が腐っていく
腐食の病に侵された鏡のように
目の前の君も
上手に映すことが難しくなっている

風呂場の壁は
ぶつぶつのカビを蓄えた
ぶら下がったヘチマの
不揃いな楕円のような

ヘチマくんよ
この空間のカビをその身ひとつに凝縮したのかい
そうだ、鏡の腐食も吸い集めてよろしく
君のスカスカにぴったりの仕事かと

ヘチマくんよ
黙ってばかりとは、どういう了見だい
それができないなら
それをしてくれないのなら

本来は君におさまっているはずの
果実、種子、水分、香り
逃げ出してしまったそれらを
取り戻してみてはどうだい


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花の残り香



一日前の日没前まで
僕の隣に確かにあった
素朴な顔のその笑顔
プレ・アドレッセンスなコーディネート

それらが包むの小さな胸には
月の灯りで育つであろう
小さな花を咲かせていると直感し
月夜の晩には手を牽いて
なるべくたくさん連れ出そう
そんなことを思っていた
何もかもが愛おしい

18時過ぎ 国道の渋滞は
もうすっかり退屈だ
姿を変えた幻の
溜め息と 薄い涙を携えて
昨日より 短くなった 車間が少し
気になっている 片手ハンドル

何度も覗いた 素朴な顔のその笑顔
また欲しくて、幻と知ってなお、
もう一度だけでも欲しくて、
隣を見るよ

瞳に映す ものなどありや しないのに
馬鹿なことだと 承知の上で
気を落としてまた 馬鹿だと思う
僕の顔には 馬鹿にみえる 笑顔が残る

(――素朴な顔のその笑顔)
窓の向こうの 東の空に
どんより重い 梅雨の雲
はて気付くことなど できただろうか

五月の幻
もう助手席には探すまい
探すのは、僕の心の 中にある
切なくて、あったかい ところ

水晶玉


白馬の王子
確かに夢見た
雪色肌の乙女とて
酒より先に酔うだろう
煙草の味のそのキスに

得られたはずの
完全勝利
あとは私が
負けた振りさえ
出来ていたのなら

何故残る
心に在るは
優しい気持ち

何故残る
瞼閉じれば今も尚
泪の溜まった女の眼

嗚呼、何故ゆえにこの風は
薄い雲をば携えて
満月の
煙草の邪魔をするのだろう

月で曲が書ける時




僕はそっと煙草を吹かしに窓の外
君は黙って付いて来て
三月最後の月の灯りで
髪を洗う横顔が画になった

ああ
なにごともなき

明日も一日
何事もなき

僕は注意深く
目に見えない程小さく笑った

そして捧ぐは
視界の闇に負けない程の深い深い祈り

その訳は
深い闇に呑まれてしまったからだろう

この祈りは
ただ深い
何にという訳でない
ひとつの祈りはただ深い


パンダの眼鏡




ここにいる

ここにいるとしか
言わないよ



それはね。

あたながここから
安心して離れていけるように



それはね。

あなたにみつけてほしいから






探して?

そこから、探して。



青く眩い雪のように
私が確かに大事に想った
優しいあかりがあるでしょう



それはね、

一緒に灯したの

あなたの氷の洞穴で

震えたかぼそい迷子のために



一緒に灯した
離れていけるように
みつけて
あなたのこころに

そこからみつけて
ここにいるから
見守っているから
あなたのこころ



九月一日



――もっと強い人だと思っていたのに
うぶな失望吐き捨てて
私はあなたを置いてけぼりに
ひなびた町を出ていった


自分の弱さ
棚に上げて


――この夏はひとりきりで過ごしたのだよ
九月の風が一息に
教えてくれて消えたから

小さな私
背伸びできるようになったよ
棚の上のそのために


やぎのえさ



丸めちまったネクタイを
ぽっけのなかでにぎりしめ
オリオン座の空 足早に

きみには電話の贈り物
ぼくにはポストに山羊の餌



「山羊の丘 遠いね おそろいの写真 ほしいね」

ぼくのぽっけに
きみのやさしさつめられた



丸めちまったネクタイの
つもりでにぎったやさしさを

ひろげて
飛ばして
風よ吹け

旅路のとちゅう 足早に