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詩人と子供は月をピカピカと云うだろう




月はピカピカしていた

それはいつだっただろう
彼の周りにいた人は
彼が本気でそう言うものだから
魂を削ってピカピカだと説くものだから
その時確かに
月はピカピカしていた

君はきっと
初めて満月を見た時だった
月はピカピカしていた

今宵の君はきっと
忘れてしまっていたり
感じる事ができなくなってしまっている
月はピカピカしていた

多くの大人は
また現代を必死に生き延びる人らは
月はピカピカしていた
そんなことを口にする人を
ちゃんちゃら可笑しいだとか
やれ拙いだとか
なんだよ電球じゃあるまいし
なんて顔して莫迦にする

それはきっと
恒星がなんだとか
それは反射光に過ぎないのだ
などと宣った莫迦が
大昔にいたからだろう

月が夜空を照らすあかりたれないのならば
君の泪は何によって乾かされようか
月が夜空を照らすあかりたれないのならば
もはや科学なんて
優しい真面目君が癒してくれるだけの老賢者

文字も観念もない
因果関係をも手放したその体で
暗い一人を生きた時
君の眼には確かに
月はピカピカしていた


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ある種の失恋



そのやうにして訪れた宵は
からうじて、粉雪を、
掌(てのひら)で翫(もてあそ)ぶばかりでした。

蕩(とろ)かして殺めては、
温もりに裏付けられた生を
愉しんでいるのでありました。

田舎の夜空が在りしままで
在りしままの田舎で在れる路傍でね
一輪挿しのやうに真つ直ぐに
それでいて夜風などゆらゆらと真に受けながら

 粉雪は畳み掛けます
 冷たあく、淡あく、
 体温すら奪うことなく
 卒なく想ひは際立たせ

やはり違う生き物なのだな
人の気持ちは解らないな、と
共感の気持ちを諦めちまつたその刹那
これまで泣けもしなかつた
オートマタのその頬に、ただ慎み深く、
涙が流るるやうになつたのでありました


壊れる前が一番美味しい




それって
いま
おもいついた
ことばなんじゃない?

それくらい
ながいあいだ
ずっと
わすれていたけど

それもそうだね
なんて返すのが自然なほど
受け容れられなかったことだけど




もう死ぬんで許してください
神さまとの対話の仕方を
その呟きを以て心得ていた時があった

余韻も突拍子もなく僕は多弁に続けるけど
きっと神さまにその願いは届いてたと思う
だから、きっと僕は人と同じだけ
生きることが難しくなってるんだと思う

だからね、
好きな人ができたら
大きな声で愛してると言おう
好きな唄を大声でうたおう
恥ずかしくっても、表現しよう
心病んで弱り切っている人がわかれば
死なないで、あなたの命が諦められない
と、生きてる内に伝えよう
伝えよう

僕の意味なんて
それだけだよ
それだけ、なんだよ


晩餐会の由来と招待状の行方




叫べばよかった 後の祭りか
目を瞑れば何も見えないはずなのに
「強く生きなさい」
瞼の裏ではじけていたんだ

誰にも知られずに静かに吐いたよ
片思いの相手の介抱で
思わず貰ってしまったときも

精一杯生きたつもりでいたけど 
けど けど けど
誰かを幸せにできたかな
精一杯生きたつもりでいたけど
精一杯に天国に向かえるのかな

でも でも でも
苦しくても、忘れないよ
ありがとう



叫べばよかった 後の祭りか
口を開けば自由に喋れたはずなのに
「強く生きなさい」
後頭部でこだましただけ

誰も呼べずに静かに吐いたよ
昔の恋人の勘違いで
毒を盛られてしまったときも

精一杯生きたつもりでいたけどさ
けどさ…
誰かに幸せにしてもらうことがあったのかな
天国で迎えてくれる人はいるのかな

でもね…
悔しくても、忘れないよ
ありがとう


茫々余情




日の光
僅かに溜めて解き放つ
畳の上で手を広げ
仰臥の欠伸耳に落つ

呼吸を一つ
また一つ
天井見ながら
また一つ

君の隣で茫々と
昔の法事を思い出す



親戚か
さも親戚の小父さんの
禿げた頭の
よく似合うこと

瓶の麦酒で蛸入道
畳の上で臍出して
閉じた瞼の猩々緋
大きな口の奥の錫



春の日の
丸く輝く散歩道
真似はできぬと嘆いても
やれ傍らの懐かしさかな


罪悪感覚書



きみの罪悪感を
わたしが救ってあげないのは
きみが悪いことをしたなんて
そもそも思っていないから

きみはきみのままで大丈夫
そう心の中で唱え続けることが
わたしができる最大限の
きみを救うということだろう

柄でもない話だが



わたしが罪悪感を
そもそも感じていないのは
わたしが悪いことをしたなんて
そもそも受け容れられないから
・・・なのだろうか

わたしはどうしても変わりたい
そう夢で叫んで
覚めて耳を傾けた

耳の痛みが落ち着いたころ
心に安らぎがあった
わたしにも救いがあるのだろうか



嵐の夜




私の怒りは いつもいつも
それは悉(ことごと)くやりばがないもので
煙草のさきつぽに
小さな小さな火を灯して
泪とは相容れないそいつに
そつと気持ちを託すんです
私の心をうつすのです



私は煙草から立ち昇る煙を
じつと見つめて
オノマトペを考えます

この立ち昇る煙で
自分の心の部屋で燻つている蟲を
炙り出そうとしているわけです

手指を微動だにせずとも
呼吸を控えてはみても
イル・レギラに煙は形態を変えます
兎に角そこには留まろうとしませぬ



まばたきのことを
ふと思い出した頃
私は“ぽたぽた”と口にしました
上か下かで言うと
勿論上へと進んでいくわけです
それでも煙が立ち昇るのは
ぽたぽたなんです



私の怒りは
それは確かに怒りと呼べる代物でした

しかし
やりばのないものであると言う点
それはもう哀しみなんですね
ぽたぽた落つこちてくるんですわ

だとしたら
私の泪では消すことのできない火
それが煙をぽたぽた落つことすこいつでせう

仄(ほの)かにあたたかいのだ