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その物語に救いがあるということ




真っ白なノートを開いたとき
まっしろだ!
そう思ったよ
そう思って、固まってしまったんだ

真っ白なノートを開いたとき
まっしろだ!
そう思って、僕の好きなふうに描いたんだ
それを思い出した


もうだめだ
それができなくなってしまった
僕の絵は、ノートの白を汚すだけ
取り返しのつかないノートを作るだけ

それだから
郵便受けの、ゴミ同然を
人目気にして持ち帰り
申し訳程度 描き殴る

すっかり怖くなってしまったな、とか
今までごめんなさい、とか
そんなことを
繰り返し 呟いて


いつしか僕は
ゴミ置き場に足繁く通ったり
そんなぼろを求めて
お金を出すようになっていた

好きに描ける
好きに描ける!
心が躍るんだ

あれ
ずいぶん手が汚いな
ああ、そうだよな
いつか綺麗に落ちる汚れかな

やがて僕の手は
ぼろを汚す黒になっていたよ


夜の海は それは暗くて
隠した手 すすぐのに 丁度よかった

どこまで海だかわからなかった
どこまで汚れかわからなかった
だから
波を感じて 一歩一歩
顔まで浸かってみたんだよ

じゃぶじゃぶじゃぶ
じゃぶじゃぶじゃぶ
ふと気が付いて 手が止まる
誰かが隣にやってきた

こんばんは
からだをあらいに うみまできたというのに
あなたのせいで うみが まっくろじゃない
どうしてくれるの?

僕のせいじゃないよ
夜だから海が真っ黒に見えるんだ
海は綺麗だよ わかるかい?
いくら僕が汚れていても それは揺るがない

あら そうかしら
わたしには きらきらと かがやいてみえるわ
それはそうとね わたしがいいたいのは
あなたがわたしに どうしてくれるの っていうこと

これ以上汚さないように
海から出て行ってやりたいが
あいにく僕の身体は汚れすぎていて
君の側を通るのもなんなんだ

かわりに近くの川を教えるから
そっちに行ってはくれないか

どうして そんな めんどうを
わたしがこうむらないと いけないのかしら

わかったよ、僕が海から出て行くよ
ただし僕はうんと醜いんだ
僕の足音が聞こえなくなるまで
目を閉じていてほしい

だきしめて

だきしめて?

その きれいな てで
わたしを だいて
なでて
わたしを きれいに してほしいの

何を言っているんだ?
僕の手はな、

もう いいから

そのまま、だきしめて

そう
ありがとう
わたしのほうが うんとよごれているの
むかし すきなひとが いてね
そのせいなの
でも
もう きれいになったわ
あなたもよごれていたみたいだけど
すっかりきれいになったわね
こんな うみ
はやくでましょう

僕は彼女に手を引かれ
ジャラジャラ浜辺を踏みしめた

波打ち際では無数の蚯蚓が海に染み出た僕の黒を貪り生き生きと乱舞していた



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